続報『童貞。をプロデュース』問題 当事者同士の対談ーそこから見えてきたもの(4)
松江哲明氏との対談
※この記事は、松江哲明氏に掲載拒否された原稿をそのまま掲載しています。
※ 対談は6時間近く行われました。記事の肥大化を避けるため、かつ対談の「内容」「加賀さんと松江さんとのやりとり」が読者になるべく伝わるように、川上の主観で編集しています 。
※ 原稿の中で「誰の発言であるか」が明確でないと読者が理解できないと判断した部分にだけ(発言者)をつけました。それ以外の部分は、発言の前後を意図のみ抽出し、まとめるなどの編集作業を行っています。
※この記事とは別に、対談を整理した記事を掲載予定でした。しかしながら、1月21日に公開された松江氏のnoteの記事を受けて、テープ起こしを公開する方針に変更しました。対談の詳細はそちらを参照してください。
—今回対談に来たスタンスは?
基本的には謝罪しにきた。直接話をして、自分の思いは全部きちんと伝えたい。ガジェット通信と『f/22』のインタビューを読んできた。基本的に加賀くんが嘘を言っているというつもりはないが、それが自分の言った事実とずれたとして、それが加賀くんにとって不快なことだったらすぐに言って欲しい。そのために間に第三者が入って欲しいというのがあった。木村文洋くんがきっかけで加賀氏とショートメールのやりとりをしたのが…
—八月とかでは。(加賀)
あのとき、第三者として入ってくれるのが木村くんかなと思ったのだが、加賀くんからそれは違うとなったり。すり合わせられる人がいなくて、今回やっとできたかな、という。
(※映画監督の木村文洋氏は、自身のブログにて、舞台挨拶後の2017年8月27日に、本件に 対しての見解を書いており、約2年後の2019年7月29日に、自身の2年前の文章の謝罪と して新たな見解を書いている。2019年の文の最後に、「松江氏と加賀氏両氏が、話せる場で、自身のタイミングで話をして欲しい」と意見を述べた。)
(https://ameblo.jp/bunyokimura2009/entry-12305131496.html)
(https://ameblo.jp/bunyokimura2009/entry-12499201426.html)
—制作の経緯について
最初は調布映画祭の上映会に加賀くんがきていて、加賀くんの撮った作品を見ていた。他の作品とは違って、味があったという印象。打ち上げの席で、加賀くんが自分が童貞であることを口にして場を盛り上げていて。そういうものは隠すものと思っていたからカルチャーショックで、面白いなと。そのあとはmixiで恋をしているという話を読んで、それを題材に撮ろうと。一緒に映画を作らないかと連絡を取って。映画を作るきっかけはガンダーラ映画祭という、イメージリングスという映像団体を主催していたしまだゆきやすさんの。ドキュメンタリーを主軸にしたインディペンデントの映画祭を始めたいということになって、ぜひ松江くんも、と。
—最初に、お互いに話し合いながら制作を進めていくという取り決めがあったと加賀氏は話しているが、それは間違いない?
間違いない。一緒に話し合って制作しようと決めた。基本的には、加賀くんが撮影したものを自分が編集すると考えていた。
—撮影時には、ただ撮ってきてと、細かい指示は受けなかったと加賀氏は話しているが?
細かい指示は受けずにというのは…最初に(作品を作ると話が決まる前に)加賀くんが撮ったものを見せてもらったよね?それは使ってない。もともと、加賀くんが自主的に撮った、日常の映像を作品に使わなかったのは、自分の『童貞。をプロデュース』という作品の主軸に合わないと思ったから。そうじゃなくて、こういうものを撮ってきて、という話をした記憶はある。加賀くんが、「いまこういうことが起きました」と言ってきたら、「それを撮っといて」という風に言った記憶がある。
—唯一覚えているのは、小岩のベンチの落書き(「野ブタパワー注入!」)をブログに書いていて、あれを撮ってきてと言われたこと。 (加賀氏)
松尾さんとの撮影のあとだよね?
—そうです。 (加賀氏)
松尾さんとの撮影のあと、告白に行く前にワンクッション欲しいという話になって。「今から撮ってきます」と、撮りに行ってくれたのは覚えている。
—それは覚えていて、基本的に話はしたと思うが、具体的に何をしてくれとかはなかった。 (加賀氏)
自分だけのアイデアであの映画を作ったつもりはない。自転車がパンクしたところとか。それは加賀くんが自発的に撮ってきて…
—何を撮ってきてくれという指示があったのは、覚えているのはベンチの落書きだけ。 (加賀氏)
歌をとにかく撮ってきてくれ、と言った覚えはある。
—それは覚えていない。 (加賀氏)
(※以後、両者の見解が一致せず)
—気になっているのは、松江さんが当時インタビューで「あれもこれも遠隔演出で」と話していたのは記憶していて。そんなことはないのに、言っているなという印象はすごくある。逐一、構成台本があるかのような、見る人が見ればそういう風に捉えられることもある。ああ、嘘をついているなと思っていたのは覚えている。ガンダーラの時点から。この話は十二年前もしていたと思う。 (加賀氏)
ああ…全部のシーンの加賀くんを演出してるつもりは全然ないが、そういう風に捉えられていたなら、言い過ぎた部分があった。ごめんなさい。
—松江氏は過去のインタビューで「出演者には知らせずにストーリーラインを作る」と言っていたが、『童貞。をプロデュース』でも同様のことを?
当時は考えていたが、最初からAVの現場に行こうとかはなかったと思う。当時自分もAVの仕事をしており、恋をしてると聞いて、そこを絡めたのかなとは。その時から嫌だったという加賀くんのインタビューを読んで、自分が強引に進めていたんだなとは思った。当時の加賀くんが好きだった人との話を作品の結末に、ということはあった。ガンダーラ映画祭の時は三十分と決まっていたので、その尺のストーリーと考えていた。
—問題のシーンについて。AV現場に加賀氏を連れて行くというのはどの段階で決めた?
作品中でも話しているが、最初にカメラを持って話している時に。AVの現場に行って一皮剥けろよと。
—加賀氏の話を聞くと、連れて行くやり方が強引に思える。コイントスの話も(コイントスは「AV現場に行く行かない」の押し問答の決着をつけるためのものだったが、編集上は「スチール男優をやるやらない」の話を決めるために行ったものとして語られている。また、コイントス自体に加賀氏は勝ったが、勝敗がついた瞬間の加賀氏のリアクションをカメラが捉えたのち、次のAV現場のシーンに切り替わり、編集上、実際のコイントスの 勝敗は分からず、加賀氏が負けたものと観客が捉えられる形となっている。)ゴリ押しと 思えるが、当時の意識は?
当時はゴリ押しという認識はなかった。コイントスをやったのは前日に、イメージリングスの事務所で。あのとき多分、しまださん、ムラケンさん(村上賢司氏)もいたよね?次の日どう待ち合わせしたか覚えてる?
—問題はそこではない。行きたくないと主張していた。散々行きたくないと言ってて、コイントスをして勝ったが、行こうよ行こうよとなった。その段階でゴリ押しが始まっていた。「怖いから行きたくない」と言ったら、絶対大丈夫だと。取材するだけで、絶対何もしないからと言われた。現場で「俺が守るから」というトーンだったが、唯一の味方だった松江さんに裏切られた。(加賀氏)
—そのことは覚えているか?
今話を聞きながら、自分が味方になるという言い方をしたり、絡みはしないと言って、説得した気になってたのだと思う。
—最初から、行かないという選択肢はなかった?
なかった。
—構成上、そのシーンがないと成立しないと?
そうだと思う。
—事務所と交渉する前段階で、カンパニー松尾氏には取材に行くと事前に話していた?
どういう形の取材をオファーしたのか?
それはしていた。AV現場に別のクルーがいてカメラを回すというのは(通常)出来ないこと。松尾さんがどう言うかは分からないが、主観では、絡みまでやるとかは言っていない。AV女優さんが童貞の男の子にちょっとアプローチをかけるようなことをしてほしい、そう言う場面を撮りたいと伝えた。
自分の問題は、それを加賀くんに伝えないで現場に連れて行ったこと。
—どこまでやるつもりだったのか?(加賀氏)
正直、映っているところまで。フェラチオさせるまでは、そこまで松尾さんに言ったか言わないかは…
—それは違う。「フェラチオさせてくれ」って言われた。フリだけでいいって言葉が、間にある。もっと松江さんは狙っていたはず。(加賀氏)
—「アプローチ」と言うのは、具体的にどういう絡みが撮れる想定をしていた?
ちょっとセクシーに誘うというか、そういう…「エキストラ」っていう言い方をしていたよね?
—事前には言っていない。現場の流れ。作品の構成上、そういう作品(童貞と性産業が結びつけられること)になるのが嫌だった。編集上は、ただ行きたくないとなっているが。
基本的には何も知らされていない。(加賀氏)
反応を撮りたいというのはあった。加賀くんは否定するだろうという前提で聞くが、本当にダメな時は現場で「関係ない言葉」を伝えてとは言っていた。
—覚えていない。言ってない。百歩譲って言っていたとしても、覚えていないくらい追い詰められた状態だった。あの時、完全にテンパっていた。映像の中で、土下座している。普通の感性だったら、本気で嫌だと分かると思う。嫌よ嫌よを演じていると思っていた?(加賀氏)
当時は思っていた。本当にダメな時の言葉を言ってなかったから。
—それは違う。一回撮影止めて話をしようと言った。その段階で意思を確認すれば良いはず。セーフワードが存在していたと言うことで、何かをかわそうとしているのでは?(加賀氏)
かわそうとはしていない。そう受け止めないでほしい。
(※セーフワードは無かったとする加賀氏と、伝えたとする松江氏で見解が一致せず)
—はっきり覚えている。「いつまで待たせるのか、松尾さんを待たせるなんて」と言われた。かなり長い時間渋った。松江さんも本当に苛立っていたと思う。(加賀氏)
—セーフワードはどのタイミングで伝えたかは覚えているか?
松尾さんには伝えていた。撮影前の打ち合わせの時に、電話で一回言っている。コイントスの日だったか…加賀くんにいつ言ったかは…撮影前だったのは間違いない。
—聞いていて疑問なのは、当時、女優さんが「アプローチする」という程度のシーンを想定していたのに、なぜ「セーフワード」まで必要だったのか。ある程度の絡みは想定していたことにならないか?(満若)
どの程度のアプローチが加賀くんにとってNGかの確認をしていないから。例えば手を触られるだけでもNGかもしれない。
—そもそも、「行きたくない」と言ってて「取材するだけ」と言っていた。そもそも何もしない約束なのだから、何かすること自体おかしい。セーフワードが存在しているのもおかしい。どのタイミングで言ったかを覚えてないのもおかしい。
声明もそうだが、悪い方向にしか行っていない。下手なことを言わない方が良い。敵だと思われているのかもしれないが…(加賀氏)
僕は敵だと思ってない。
(※「戻りましょう。一から紐解いて行きたい」と加賀氏)
—まず、何も知らされずに行った。現場の流れで、その場でスチールで(スチールで撮影されるエキストラとして)入ってくれと。はい、やって、と。その時点でおかしいなと思っていた。そのあとホテルに移動したら「パンツ脱げ」と言う話になった。「嫌だ」「やれ」の押し問答が長い時間あったあと、松江さんが一回二人で話そうと、非常階段に行った。カメラを止めて、「なんでお前嫌なんだよ。あの子かわいいじゃん」って言ったのを覚えている。それで「そういう問題じゃなくて」となり。そしたら「AV女優は汚いと言え」と。(加賀氏)
そうですね。
—「そしたら俺が殴るから」と。それである種の逃げが用意されたと思った。すごく言いたくなかった言葉ではあったが、言い方は変えて乗っかった。それで殴られる。その段階で、意思確認は出来たはず。セーフワードの確認もその場で出来たはず。
あの言葉を言わせたのは本当に悪かった。自分の作品を面白くするためだけに言わせた言葉。それを言わされたことに傷ついたってことは、インタビューを読んですごく伝わってきた。
ーそういう部分が「ドキュメンタリー」という…十二年前にも話していたが、フェイクドキュメンタリーと言えばいいじゃないかと。(加賀氏)
それを「ドキュメンタリー」という形で公開したってこと…そこは本当に悪いと思う。
—それでオチがつくと思ったが、「俺たちが脱いだんだからお前も脱げ」となって。「嫌だ」「やれ」の押し問答があって。フリだけでいいからという話になって。そしたら女優さんが実際にしてきた。実際にやったのは誰の指示?女優さんの意思?(加賀氏)
女優さんの意思だと思う。
—女優さんにも加害性がある?(加賀氏)
加害性を持ってやったかというと、違うと思う。
—加害性って、本人がどう思っているかではなくて、行為自体が…(加賀氏)
そういう空気を作ったのは自分。現場の雰囲気というか。そういうことをしてもセーフだみたいな空気をつくった。そこは責任がある。あの場で起きたことのすべては、僕に責任がある。
—やめてくださいと言ったら、松尾さんが羽交い締めして撮った。それで、勃起してんじゃねえかと笑いながら(松江氏が)言った。(加賀氏)
—脱ぎ始めたところから、フェラチオまでいっていいやと?
当時はそういう驕りがあった。
—現場で、加害的なことをやっている意識は全員なかった?
あの時はなかったと思う。それがすっごい当時の驕りだと思う。面白いものが撮れればいいみたいな。
—現場に来るということは、こちらの要求を加賀氏が飲んだという気持ちがあった?
あったと思う。
(※一緒に映画を作るという話になった時点で、お互いに同意を得ながら制作を進めていくことを約束したこと。その約束が、撮影現場で裏切られたこと。編集や、最後の告白のシーンも渋っていたが押し切られたことを、加賀氏が改めて説明する)
—告白のシーンの確認。最初に別の女性を撮り、それに満足できなくて、「ご本人で撮りましょう」と。加賀氏に確認を取る前に、ご本人の出演は決まっていた?
ご本人の連絡先は知らなかったので。
—いや、知っていた。(加賀氏)
(※いつ、ご本人の連絡先を松江氏が知ったのかについての議論になる。松江氏はタイミングは分からないが加賀氏から教えてもらったという認識。加賀氏は、教えた記憶はないが、本人が出演することを明らかに嫌がっていたことを強調し、もし教えていたとしても、出演オファーすることを前提で教えることは絶対にないと主張。)
連絡したのは、別の人で撮った後。そのテイクでOKだったらOKにしている。やっぱり本人でやろうと言った。
—そもそも別の人で撮るのも嫌だったし、そう伝えていた。そこで押し問答になり、本人でやるか代役でやるかの二択を迫られた。どちらも嫌だったが、マシな方(代役)でやることに乗ってしまった。(加賀氏)
—なぜ本人で撮ろうと?(加賀氏)
すごく傲慢だが、この映画がきっかけで実際に彼女と(加賀氏)が付き合えたらいいなと思っていたところがある。
—それは本当に傲慢だと思う。彼女との関係を(松江氏は)自分以上に知らない。(加賀氏)
撮影している二ヶ月弱の間に、加賀くんの気持ちを聞いたり。この撮影中に彼女への思いが進行しているなと思った。映画の中だけじゃないところに加賀くんが行けたらいいなと。上映した時のことは覚えている?
—覚えている。ラ・カメラ(下北沢LA CAMERA)で。(加賀氏)
ラ・カメラの上映に彼女が来て(松江氏が上映に呼んだ)。彼女が加賀くんの気持ちに気づいて。加賀くんが「どうしましょう」って言ったとき、「もう告白するしかないよ」って言って。加賀くんが彼女を追っかけて階段を滑って行ったのを覚えている。今考えると恐ろしいが、映画作って良かったなという記憶になっちゃってる。その後、付き合ってたよね?
—付き合っていた。(加賀氏)
それを聞いたとき、嬉しかった。映画がきっかけで、加賀くんが彼女と付き合えたと。
—それは大きな間違い。自分の認識では、遠回りしたくらいに思っている。ラ・カメラの段階でも傷ついている。すごく辛かった。初恋のほろ苦い思い出とかではなく、単純にプライバシーを侵害されて傷ついた。(加賀氏)
ごめん。
—単純に傷ついたというのが当時からの感情。そういう話を散々した。編集が終わった段階で。嫌だと。AVの撮影シーンも嫌だ、告白のシーンも嫌だと。
言葉を尽くしたと思う。それで伝わらなかった。どうすれば良かった?(加賀氏)
どうしたら良かったのかな…
—編集が終わった段階で本当に嫌だという話を散々した。それは松江氏もブログに書いていた。「加賀に民事で訴えると言われた」と。お互いの話の中でそういう話が出て。(加賀氏)
この映画の中で、威圧的な立場でいようと自分に課していたのはあった。高圧的な感じが。ガンダーラ上映の際、加賀くんに文章を書いてもらった。それを一度NGにしている。自分が優しすぎる(優しく書かれている)から、もっと悪役にしてくれと。
一緒に作ってるという意識があった。加賀くんも作り手だという気持ちが。
—文章は覚えているが、書き直した記憶はない。
作り手だと思っていたとしたら、嫌だという意思はなぜ尊重できなかった?(加賀氏)
あの映画が広がることを一緒に体験したかった。
—それは望んでいないが?(加賀氏)
当時は望んでいないと思っていなかった。
—もし逆に、自分が映画を監督として作っていて、プロデューサーの意思で、やりたくない表現に改変されたら、許されることではないのでは?(加賀氏)
自分の作品で…具体的な名前は出さないが…自分の意思が必ずしも通らないものだとしても、自分の作品だという考えはある。自分が現場で監督として関わったものだったら。
—望まないものでも?(加賀氏)
自分は、そう。
—松江氏が納得しても、加賀氏は…(藤本氏)
そこが、加賀くんに謝らないといけない。本当にごめん。映画が広がって、お客さんに会って、加賀くんの考えが変わるんじゃないかという気持ちはあった。
—例えば、家族が、自分がやられたようなことをされたとしたら肯定できる?(加賀氏)
今の自分は肯定できない。
—当時は?(加賀氏)
当時だったら、そういうことを言っていた可能性はある。あの年はお客さんがたくさん入って…
—松江氏の言う「今」とはいつ?(加賀氏)
二年前、加賀くんの怒りを直接感じてから。
—本当にそうなら、なぜこの声明文(2017年の)を出せたのか?(加賀氏)
声明文を出した時は、作品を守りたかったというのはあった。
—その作品は誰のものなのか?(加賀氏)
あの時は、自分のものだった。今はそうじゃない。
二年前は、そういう風にしないと作品を守れないと思った。加賀くんが否定しても。自分にとっては…憎しみとか、利用しようとかだけじゃ映画は作れない…加賀くんが好きだった。これは本当に。否定されるかもしれないが。
正直、自分はあまり変わってない。加賀くんに対して、憎いとか敵とかはない。
—ではなぜ、十二年前に着信拒否できたのか?(加賀氏)
あの時は映画を進めるということしか頭になかった。なんで加賀くんはこう広がっているものを拒否するんだろうという気持ちがあった。
—想像力が欠如していた?(加賀氏)
欠如していた。お客さんにも、あの映画を観て加賀くんのことを素敵だと言う人もいた。観て良かったですとか、面白かったです、とか。
—それも含めて辛い。肯定的な一方で、嘲笑はあったし、不愉快だった。(加賀氏)
それは悪かった。
-加えて、他の誰かを傷つけているとも思った。「AV女優は汚い」という発言を放置して、ドキュメンタリーとして残している。それは誰かを傷つけていると思う。
作品自体が持っている加害性もある。それよりも「作品を守る」のか?(加賀氏)
そういう意見があることも、当時聞いていた。満若さんからも電話したときに聞いた。当時観たときすごく嫌だったと。プラネット(プラスワン)で観たときに…
—パート1のホテルのシーンは今でも覚えていて。友達と一緒に観に行って、帰りにすごく嫌な気分になった記憶がある。そのあと松江さんの作品は追わなくなったというのは、個人の経験としてはある。 (満若)
そういう声も聞いていて。それは聞きつつ、やっぱり面白かったという圧倒的な声の方ばかり向いてたというのはある。
—どれだけ罪深いことかという認識はなかった?想像力がなかった?(加賀氏)
罪深いというよりは、お客さんの反応が糧というか。それが証拠だと考えていたところはあった。10年間上映してたのもそこ。観たい人がいる、それに答える、としか考えてなかった。2年前舞台上で加賀くんがやったことは、びっくりしたのが正直なところ。今思うと恥ずかしいけど。
—ある種、仮に悪意がなかったとしても、それはすごく罪深いと思う。(加賀氏)
加賀くんの気持ちを無視してたのは、本当に悪いと思う。
—綺麗にしすぎだと思う。(加賀氏)
—(2019年の謝罪文の話に戻る)そもそも出した経緯は?(加賀氏)
シネマスコーレで『f/22』のインタビューを読んで。SPOTTED(のホームページ)に出すのが良いのか悩んだが、そこ以外出すところがなかった。直井さんに出そうと思うと相談した。そしたら直井さんも、自分も出すと。
—直井氏の文章には関与してない?
していない。それは自分とは違うから。
—直井さんの声明では「事実と異なる内容を発信してしまった」と書いているが、これについては松江さんは?(加賀氏)
違うと思う。
—事実と異なる内容を発信していないという認識?(加賀氏)
僕はそう。
—「性的なシーンの強要やパワーハラスメント等の違法または不当な行為は、「童貞。をプロデュース」においては存在しません。」そう思ってる?(加賀氏)
今話した内容と矛盾する。そこは訂正する。誤りがあった。
—今まさに嘘ついたんですね。今また認識が変わったんですか?(加賀氏)
この声明を出した時と、ここで話している時とは違う。
—「加賀氏の一方的な主張を受けて一部で喧伝されているような、本作が暴力で作られた映画であるという風評は、すべて事実無根であり、明確に否定します。」今現在もそう思っている?(加賀氏)
それは、これから話すことを加賀くんが聞いて、どう思うか。強要だけで作ってないという理由は、ガンダーラ映画祭の上映と、劇場公開の間に、加賀くんとの関係が悪かったと自分は思ってない。
—関係性は関係ないのでは。関係性が良好だったから加害はなかったというのは間違っている。(加賀氏)
そこの認識がずれてるという話をしたい。
—事実無根、明確に否定まで言っている。今もそう思っているのか?(加賀氏)
今現在は、思っていない。誤り。その上で、なぜこれを書いたかの説明をしたい。加賀くんがどういう気持ちだったのかを聞きたい。撮影が終わった後も、うちに遊びに来たり、『ドキュメンタリーは嘘をつく』のエキストラに来てくれた。その時、どういう気持ちだったのかを聞きたい。
—『ドキュメンタリーは嘘をつく』はムラケンさん(村上賢司氏)に呼ばれて行っただけで松江さんは関係ない。それを持ち出すのはずるい。印象操作。(加賀氏)
例えば、彼女と付き合うと教えてくれた時はどういう気持ちだった?
—それは教えるのでは。(加賀氏)
『童貞。〜2』の時、梅澤くんを紹介してくれた。一緒に家に行ったり。その撮影も、コミュニケーションは合ったし。飲み会呼んだりとか。上映に来てくれたりとか。よく連絡する人リストに入っていたり、いい関係だと思っていた。
撮影中も、撮影後も恐怖の中でやってたと言っているが、『〜2』に登場してるし、その時は?
—嫌だった。嫌だと言った。関わりたくないとはっきり言った。(加賀氏)
(ため息)。そこはごめん。
—どうすれば伝わるのか?二年前に(舞台挨拶で)やったことをやれば一番早かったかもしれないが、それはやりたくなかった。何度も自分の言葉で冷静に伝えたと思う。(加賀氏)
そうか。ごめん。梅澤くんを紹介してくれた時はどういう気持ちだった?その時も恐怖を感じていた?
—人間はそんなに単純ではないのでは。恐怖という感情一色で関係性は説明できない。色んなレイヤーの気持ちがある。例えば、お金を貸してずっと返してくれない友達がいて、そこですぐ絶交にはならないと思う。金返してくれと、言い続けると思う。(加賀氏)
友達関係を続けていたけど、本当の友達ではなかった?撮った後も自分は友達だと思っていた。上映をするまで。そこの記憶がどうしてもある。
—だからと言って、加害行為自体とは関係がないのでは。(川上)
—先輩後輩という関係。パワーバランスは松江さんの方が強い。作品の取り扱いについてイニシアチブを持っていたのは松江さん。この件を解決するには(両者の)関係が良好でなければ、という意思があった。気持ちを汲んでもらおうという働きかけを考えていた。喧嘩して、訴えてどうこうというのは当時なかった。(加賀氏)
DVD化の話があるまでは、良好に進んでると思ってしまっていた。
—編集が終わった段階でAVシーンと告白シーンに対して、嫌だと言った。その時に「ガンダーラ」以外で上映する時は相談する、その時は加賀くんの意見を尊重する、という説得があって。ガンダーラの上映以上はないと思い、譲歩した。その時強く約束した。
口約束も契約だから訴えたら民事で勝てるとまで言った。言葉を尽くして自分の気持ちは伝えていた。ここまで言っているから伝わるだろうという思いがあった。
さらに、関係をもっと築けば気持ちが伝わるのでは、とまで思っていた。先輩後輩の関の中で、認められているか認められていないかもある。言葉が届かない理由の一つにはそれがあると思っていた。(加賀氏)
加賀氏のことは認めていた。
—ではなぜ意思は尊重されなかったのか?(加賀氏)
映画が広がる機会に乗って欲しいと思っていた。作り手としてそれを望んでいないわけないだろうという気持ちがあった。こんな風に広がるチャンスに、加賀くんが一緒に乗らないのが不思議だった。だから意思を無視してでも、良いことなんだと…加賀くんもお客さんと出会えばきっといいはずだ、みたいな気持ちがあった。
—嫌だった。笑っている人たちも嫌だったし、面白かった、感動したと言われるのも嫌だった。自分が望んだ形の作品ではなかったし。
直井さんともそう。穏便にしか(気持ちを)言えなかった。ロサの勝村さんもそうだが。みんなが喜んでいる。自分だけが嫌という状況で、はっきり言えるかというと、当時は難しい。だからこそ松江さんには分かって欲しかったが、何度も裏切られた。(加賀氏)
上映中も嫌だった?
—嫌だった。そもそもまずガンダーラも嫌だった。それも伝えた。劇場公開も嫌だと伝えた。二週間で上映が終わる話だったのが延長になった時も、「まだ続くのか」「嫌だ」と。都度言っていて、限界に達したのがDVD化の話の時。一過性のものでなくなるのがどうしても嫌で、だからロサで、夜中四人で散々話した。(加賀氏)
本当に悪かった。自分が、広がる映画の波を止めたくない気持ちがあった。加賀くんを無視したのは本当に悪かった。
加賀くんを作り手と思っていたから、一緒に乗って欲しかったと思っていた。そこが加賀くんと梅澤くんとの接し方の違い。なんで作る人なのに、お客さんが観てくれて、それを否定するのだろうというのが、当時の考え。
—今としては?
今としてはありえない。
—文脈として、性暴力被害の映像を撮られて、映画として公開されること。加害性は高い。性暴力との認識は2年前まで抜け落ちていたということ?(川上)
そうですね。加賀くんの声をちゃんと聞いていなかった。
—当時女性からメールがあって、すごく嫌だった、傷ついたという。あれは性暴力だと。その話も松江さん、直井さんにはしていた。作り手と言ってくれるのなら、作り手としてこういう作品には加担できないし許せないと伝えていたはず。あまりにも独善的すぎる。 (加賀氏)
そうだね。『童貞。〜』を上映した後だと思うが、加賀くんの作品の上映が下北沢であった時に、松尾さんと一緒にゲストに呼んでくれた。その時の加賀くんが肩書きに「童貞アーティスト」と書いていた。それはどういう気持ちで?
—あれは、自分が書いたわけではない。自分も嫌だったが、オムニバスで上映していて、その中で自分が一番若手で、先輩達も松江さんと同じで、嫌だと分かってなかった。他の監督たちが呼ぼうと言った。(加賀氏)
自分と松尾さんが揃うのは恐怖だったのでは?どういう気持ちだったのかなと。
—オムニバスの中で自分が一番若手で、チラシの文言に対して嫌だったと強く言えなかった。客前で話すことにそれほど恐怖はないと思うが。(加賀氏)
—松江氏としては、一連の加賀氏の行動を好意と受け止めていた?
不本意だと感じつつも、一緒に行動することは好意だと捉えていたのだと思う。
—関係の取り方はだんだん逆転していった。松江さんはもう会いたくないと。自分としては話す機会を伺っていた。着信拒否もされて、友達の電話を借りて電話した。その時も途中で話を切られて終わった(https://youtu.be/yrh-E6KQbPM)。
それっきり連絡が取れないまま十年が過ぎた。(加賀氏)
10周年上映の時、来てくれると言われて嬉しかった。十年の間、人からも聞いていた。知り合いの女優さんから、加賀くんに『童貞。〜』を観たことを伝えたらすごく喜んでいたと。そのあと、加賀くんとその話で盛り上がったと。映画に対してもうネガティブな気持ちだけではないのかなと思った。
加賀くんの友達だという人から話しかけられて、「松江さんと会いたがっていた」と聞いた。「和解してくださいね」と。それをすごく覚えている。
ショートメールでも言ったが、国会議事堂前でばったり会った時に「結婚おめでとうございます」と言ってくれたのが、すごく嬉しかった。そのあと、twitterでも、(加賀氏が) 「やっと松江さんにそういうことが言えた」と書いていたと人から聞いて、ああ良かった と。十年目の上映で加賀くんを呼ぼうと思ったのは、その三つのきっかけが大きい。
あの時、妻と子供を連れて行こうとしていた。加賀くんと梅澤くんに会ってほしいと思っていた。今思うと傲慢と思うが、そういう気持ちだった。
—「結婚おめでとうございます」と言うのは、問題とは別。松江さんに対しても様々な気持ちがある。どんな感情があれ、人間の形を残しておきたい。松江さんに対するネガティブな感情で、自分が変えられることや、感情に飲まれてただ人を攻撃するようなことが嫌。
(松江氏は)自分の価値観の中でしか想像していない。想像力の欠如が現実を見せていないのだと思う。
女優さんの感想も、その場でいちいち説明はしない。「そうですか、ありがとうございます」と、その場では思っていなくても言うはず。いちいち喧嘩なんてしない。自分の良いように物事を解釈しすぎだと思う。人間いろんな感情がある。物事を単純化しすぎると言うか。だから人の気持ちが分からないんじゃないかと思う。(加賀氏)
取材に入っていて、自分たちの話を聞いていてどう思うか?(松江氏)
—加賀氏の思いは変わらない。松江さんに何一つ自覚がないんだなと思う。自分の良いように解釈していたのではと思う。(藤本氏)
—性暴力の文脈で、加害者側が加害の意識を持てないという話があるが。伊藤詩織氏のケースで言うと、レイプされた後に詩織氏が山口氏にメールしたことについて、「レイプ後にも普通にメールして来たじゃないか」と言うこと自体も二次加害。客観的に聞いて、あの時は協力的だった、「結婚おめでとうございます」と言われ関係性は良くなったと思ったと言う松江さんの話も分かるが、それを加賀さんに言うこと自体も、自らの加害性の認 識が甘いのでは。当時と、そこから継続する加賀さんの被害への認識が甘い。こういう話し合いで認識を改めていって欲しいと、第三者としては思う。(川上)
—極論すればユダヤ人をガス室に送った人たちと同じ。自分のやっていることの加害性に対し無自覚という。もっと重く受け止めるべきだと思う。自分は死んでもおかしくないぐらい悩んだ。松江さんは殺されてもおかしくないことをしたんだと思う。その自覚を持って欲しい。自分は誰にも死んで欲しくない。糾弾することで気持ちよくなりたい訳ではない。どうやったって自分が気持ちよくなることはない。(加賀氏)
加賀くんと話す機会が持てたのは良かった。
—松江さんの家族に対する責任もあるので、生きてて良かったと思う。これから取れる責任もある。やるべきことをやるべきだと思う。(加賀氏)
そういうつもりがなくても誰かを傷つけるというか。どういう伝え方をすれば良いか。
—だからこそ、この件は広く議論すべき問題だとドキュメンタリーの作り手としては思う。加害意識を持てないというのは誰にでも起こりうる話。松江さんは若手としてドキュメンタリー表現を切り拓いて来たというポジションだったと思うが、当時の演出や編集のやり方は、やっちゃいけないやり方だと思う。フェイクドキュメンタリーと言っていれば良かったのかもしれないが。ドキュメンタリーを掲げるのであれば、そのルールを侵していたと思う。それは良しとしていた?(川上)
当時は良しとしていた。
—それが衝撃で。当時、すでに日本映画学校を出てしばらく経っていて、安岡さん(安岡卓治氏や森さん(森達也氏)とも、佐藤真さんについても(知っていたはず)。怖さ(ドキュメンタリーとして作品を公開する)を既に自覚していたと思うが。AVの仕事で倫理 が少しずつ薄れていったことは?(川上)
それはない。当時は自分のことをAV監督とはおこがましくて言えなかった。
—当時の演出、騙してやらせて強要したというのが「演出」として許されると、どういう所から認識していた?(川上)
当時はガンダーラ映画祭のために、狭いイベントで作っていた。ドキュメンタリーの映画祭としまださんは言っていたが。「劇映画ではないもの」をドキュメンタリーと言うような。あの場がカウンターであろうとした。メジャーな映画、テレビ局の映画が強かった時代の流れの中で、カウンターであるためには、赤信号というか、そういうものでもやるべきだと言う感じはあった。
—作品だけではなく、映っていない部分のやり方も強引。そのやり方は自身のものか、どこかから学んだのか?他の作品でもやっているのか?(藤本氏)
—そこは重要で、それがOKだとの感覚だったなら…周囲もこの演出がありだという認識で、それが今にも引き継がれているとしたら…(川上)
今はできない。そんなことやらない。ありえない。当時は『童貞。〜』についてはあった。自分がカメラを持って、一対一で対峙している関係性の、自分が全て背負っているという作り方の中では、あった。他の作品もそうかというと違う。
これもドキュメンタリーだという驕りはあった。何がドキュメンタリーかという議論は今もあるが。
加賀くんがブログで最初に書いた、これはヤラセだということも、それも含めて映画を見て欲しいという気持ちがあった。観客が判断してくれれば良いというような。
—お客さんの大部分が松江さんと同じように「ドキュメンタリー」を定義できていたかというと。(加賀氏)
それは違う。
—その違いによって生じる被害は想像できたのか。そのことも十二年前に言った。嫌だと。(加賀氏)
—二年目も上映を続けたのはなぜ?
劇場の要望と直井さんとで、毎年やろうと、一年目の上映のあとでそういう話に。
—なぜ加賀氏に相談しなかったのか?
関係性が断絶していたから。
—その前から相談されてない。ロサでやる段階でも、事後報告。(加賀氏)
—権利として、関係性が断絶していたから連絡しない、とはならないが。(藤本氏)
そうですね。そこは直井さんに任せっきりだった部分がある。
—直井さんには、もともと松江さんとの取り決め(上映時には相談)があったと話したが、それは松江さんと加賀くんの間の話だから知らないと。松江さんに話すと、それは直井さんに任せていると。こっちは宙に浮いた状態で話が進まないというのが当時の状況。誰も責任が取れていない。(加賀氏)
そうだね。
—10周年記念上映の舞台上で、全然反論しなかったのはなぜか?(藤本氏)
観た直後のお客さんに、何が本当で何が嘘かという話を絶対にしたくなかった。作品を守るため。作品は監督の自分が守らなければ誰が守るんだという気持ちはあった。舞台の上で話す話じゃないと言ったのは、それ。
—そういうレベルの話ではないのでは。ものを作ってる人だけのルールと思うが。(藤本)
そう思う。
—ドキュメンタリーを作ってる立場から見ても、作品を守るより前に、出演者が被害を訴えてるんだから、そっちだろうと…この場合は成り立たないと思う。出演してもらっている人があって作品がある訳で…我々の仕事は。(川上)
—カッコつけてるようにしか。作品を守ってるのではなく自分を守っているのでは? (加賀氏)
当時は本当に作品を守るつもりだった。加賀くんがお客さんを否定するのがショックだった。「笑っているあなた達も同罪」という言葉は、お金払って見に来たお客さんになんてこと言うんだと思っていた。
—逆に、お金払っているから責任が発生すると思う。お金を払うことで作品の正当性をある程度担保している。(加賀氏)
そこは加賀くんとの考え方の違い。見ているあなた達も同罪です、と、そういうことは言ってはいけないと思った。
—そこまで強くは言っていないが、何らかの責任は発生するだろうと。(加賀氏)
『童貞。〜』を観た観客が感じるポジティブなものもネガティブなものも、その人それぞれのもの。そこに対して加賀くんが一方的な見方を…
—一方的と思うのか?
二年前はそう思っていたが、この二年間で、加賀くんの言葉を見て…いろんなズレがあるなと。
—今気づいたのか?ズレはもっと前からある。あれは(舞台挨拶は)ある種の結果だと思う。その認識がないとしたら…(加賀氏)
そこは本当に申し訳ない。
—今は「お客さんも同罪」との言葉は理解できるのか?どう理解をされたか?(満若)
加賀くんがインタビューで言ってたこと。「文脈を変える」と。そう理解している。
—加賀さんにはそれを主張する権利がある。最終的に出演者として扱われていて、ドキュメンタリーと言う形で上映されたことで、劇中のセリフなども加賀さんが背負っていく。そ れに対して「違う」と言う権利は持っている。笑われていることに対し、笑うなと言う権利は、やはり映っている人にある。(満若)
—「松江監督、配給会社および劇場としては、平穏に本作品の上映を継続するため加賀氏に対し協議を申し入れましたが、加賀氏は協議に応じませんでした。」の部分について
そもそも十二年前に協議に応じなかったのは松江さん。(加賀氏)
—「加賀氏と和解できないまま本作品の上映を継続するのは、観客の安全を担保できない恐 れがあります。」これは本気で思って書いた?(加賀氏)
劇場がそう言っていた。当時はお客さんにも関係があると考えていた。
—加賀氏が観客に対して暴行を振るう可能性があるかのように読めることが問題(藤本氏)
—ミスリードがある。逆に言えば警察を呼べばいいのでは?(加賀氏)
そういうことをしてまで上映は出来ないとロサに言われた。
—全体的に卑怯な文章だと思う。
「本作品の撮影は加賀氏の了承の下に行われ、強要などない」と、本当にそうか?(加賀氏)
話したように、ここは否定する。当時は一緒に作っていたつもりだった。
—電話で話していた時(youtubeで公開されている電話)、「あれは俺が一人で作った」と言っているが?加賀氏には自分の作品だから上映の権利があると言っていた。(牛丸氏)
あの時は、売り言葉に買い言葉というか。そう主張しないと上映が続けられないと思っていた。作品を観てもらえれば分かると思うが、自分だけのアイデアで作った映画ではないから。
—悪質だと思う。
「加賀氏が強要を受けたと主張するシーンについても、加賀氏は一貫して撮影に協力的でした。松江監督は何ら強要行為などしていません。」嫌と言っている。(加賀氏)
これを書いている時はそう思っていた。ごめんなさい。
—作品に対して不誠実すぎると思う。作品を守ると言ったが、詭弁だと思う。作品ではなく自分を守りたいのでは?本当に誠実に話してもらいたい。解決したいから。
「加賀氏は一貫して撮影に協力的でした。松江監督は何ら強要行為などしていません。」本当にそうか?(加賀氏)
強要行為はあった。
—「このことについては、撮影現場にいた複数の人物の証言もあります。」
複数の人物とは?
松尾さん。
—どの段階で証言をもらった?
これを(共同声明文を)作る時。
—松尾氏は証言していないと言ったが。どっちかが嘘をついていると?
嘘をついてるとは言って欲しくないが、松尾氏さんには電話で確認を取った。
—声明を出す前に電話で「あの現場で強要行為はなかったですよね」と?
はい。「そういう現場ではなかったよ。」と言っていた。
—「複数の人物」とは誰か?
松尾さんだけ。
—複数の部分については嘘?
そうですね。松尾さんがこれは確認していないというのであれば、自分はそれでいい。そこで、松尾さんと言った言わないの話はしたくない。この声明を出すときに直井さんに任せっきりだったこともあった。
—色々食い違う。直井さんはここに関してはノータッチと言っている。
「本作品の撮影現場は、暴力的な演技指導や、実際の暴力が行使される現場では決してありませんでした。」の部分。「実際の暴力」とは?羽交い締めは暴力ではない? (加賀氏)
そこはごめん、謝罪する。実際の暴力。撮っているときはそういう認識は薄かった。
—この二年前の段階でも薄かった。(加賀氏)
薄かった。ごめん。
—さっきも言ったが、「性的なシーンの強要やパワーハラスメント等の違法または不当な行為は、「童貞。をプロデュース」においては存在しません。加賀氏の一方的な主張を受けて一部で喧伝されているような、本作が暴力で作られた映画であるという風評は、すべて事実無根であり、明確に否定します。」これも本当にそう思って?(加賀氏)
書いた時はそう思っていた。今は違う。
—「パンツ脱げよ」のシーンも、パワハラにはならないと思っていた?
加賀氏と松江氏の間、松尾氏との間に力関係の差があった。それでもパワハラの認識はなかった?
多分なかった。それよりも映画を面白くする方が勝っていた。
—壇上で加賀氏の訴えを聞いた上でも、映画を面白くする考えが勝っていたが故に、パワハラ行為に当たらないと思ったということ?
そこまで考えが及ばなかった。
—加賀氏が壇上で主張したことは何一つ理解できなかったということ?何を言ってるんだろうと?
そう。
—「お前待ちだ。松尾さんを待たせるなんていい度胸だな」と言ったのは覚えている?明確なハラスメント発言だと思うが?
覚えている。当時、そのように振舞って撮ること自体で、作品が面白くなるんじゃないかと考えていた。それがこの映画に必要だと。
—映画を作るため、面白くするための行為と、パワハラは同時に存在しないという意識だった?
そう。当時は。
—声明文を出したときにもパワハラの意識はなかった?
なかった。今は思わない。映画が広がっていく波に乗らなきゃという感じがあった。本当にごめん。インタビュー記事を読んで、二年前に加賀くんがやったことが分かったというのがある。
—加賀氏のブログは読んでいなかった?
詳しい内容は覚えていないが、読んだ。会いたいというのはあったが、加賀くんが怒りを持っているときに会えないと思った。だから夏に木村文洋くんが間に入って、これで会えるかなと思っていた。
—松江さんはまだ物事を綺麗に言おうとしてるなと思ってしまう。(加賀氏)
本当にそういうつもりはない。
—この文章、卑怯だと思わない?(加賀氏)
今振り返ると卑怯。
—未だに誠実さが感じられない。この文章には謝罪の意図はない。自分たちはあくまで被害者という認識だった?(加賀氏)
そうだね…いや、そこは違う。加賀くんと十年間向き合って来てなかったということの形。加賀くんが憎いとかは全くない。
—脱線するが、共通の知り合いと飲んだときに、松江さんが飲みの場で「加賀は当たり屋で生計を立てている」と言ってると聞いた。直井さんも聞いたことあると。連絡を絶ってた時の話。そういうことをしている。
別の共通の知人と会った時も「頭がおかしくなった」と言ってたと。会ったら印象が違って驚いたと。それも無自覚に言っていた?(加賀氏)
そうだね。無自覚に言っていたのだろう。ごめん。
—色んな人と話をしていたはず。町山さん(町山智浩氏)とか。そういうときにこの件に関してどう説明したのか?(藤本氏)
加賀くんと、まず会って話がしたいと言っていた。
—話をしていて、今日明日で解決する話ではないと思えてきた。まず声明文も、十年間に渡って劇場公開してきたことに関し、名誉毀損と権利侵害がある。そこは認めてもらえる?(加賀氏)
はい。
—これからどうするかという話になってくるが、どう思うか?ごめんなさいで済まそうと? (加賀氏)
そういうつもりでは来ていない。まずちゃんと話をしたかった。今すぐ何ができるかは答えられない。加賀くんがどうすれば納得するかを知りたい。
—自分が納得すれば終わりと?(加賀氏)
ずっと抱えていく。抱えていくし、考えなければいけないし…
—名誉毀損されている(共同声明で)。それに対して名誉回復を図る?(加賀氏)
まず、声明を取り下げる。
—当たり前。これを撤回して訂正のプレスリリースを出してほしい。自分も仕事をしてて色んな人に責任を負っている。なんでこんな文章を書いてしまったのか?(加賀氏)
まず、上映中止になるのは映画館にとってありえないこと。その説明をしなければと思った。
—共同声明文には誰が関わっているのか?松江さんと直井さんと…(加賀氏)
あとは弁護士。松尾さんにも意見を聞いている。今だったらこういう出し方はしない。加賀くんと話すべきだったと思う。当時は公開前提がどうしても飲めなかった。これは加賀くんと僕の話だというところがあった。第三者が入ってほしいのはずっとあった。
『f/22』さんから連絡が来て…その間に第三者として立つという人がいなかった。
(※『f/22』は2019年11月発行の第二号に加賀氏のインタビュー記事を掲載。加賀氏のインタビュー後、編集長の満若が松江氏にも取材のオファーを出したが、断られていた。)
—なぜと思うか?村上さんとか森さんとか安岡さんとか、事件のことは知っていたと思うが?(川上)
どっち側の人間じゃないかというような…全く知らない人が立たないといけないというのがあった。『f/22』さんから連絡が来たときに、やっとそういう人来たとは思った。ただ、加賀くんに先に話を聞いていたのと、掲載が次号というのがあって、それよりまず加賀くんに会いたいと言った。
—僕のインタビューを断ったのは、加賀さん側だと思ったから?(藤本氏)
映画を見ていないから。
—映画を見ていないとなぜ取材を受けられないのか?(藤本氏)
映ったものから判断して欲しかった。映画に加賀くんに対する気持ちを込めているし。
—それは間違っている。この件に関してあなたは作家じゃなく犯罪者。自覚したほうがいい。作品を見てるか見てないかは関係ない。(加賀氏)
作品を見るのは大事だと思う。
—この後に及んで作家的にポーズを取るのはダサい。もっと素直になったほうがいい。二年 前の段階で見えてなかったなら、今も想像力が足りてないだろうと自覚したほうがいい。(加賀氏)
藤本さんの取材を受けれなかった理由は「映画秘宝」に「死んでほしい奴」と書かれていたから。SPOTTEDに連絡してもらえれば作品を見れるようにしていた。藤本さんが作品を見たら、(取材を)受けた可能性はあった。
—よく分からない。単純に性加害の話。その事実関係を確認したいというオファーだった。 (藤本氏)
—見ていない人の意見も重要。映像で本質がごまかされる部分もある。テキストベースで見たら本質に目を向けられるということもある。(加賀氏)
—作品を見てない人が発言してはいけないというのは間違っている。今後も作品は見れないが、だからと言ってこの件について発言する権利がないとはならない。制作プロセスについて被害者が告発を出している件について検証しましょうという取材姿勢だったはず。作品自体を批評する訳ではない。想田さんも同じようなことをtwitterで書いていたし、映画界の人に「作品を見ていないのに」というのはあるが、冷静に考えると文脈の取り違えだと思う。(川上)
今、第三者の人を入れて話をしようと思ったのは、自分が作品を守ることで誰かを傷つけていると思ったから。当時はその自覚は薄かった。
—作品を守るためというのは、本当に自己保身ではないのか?(加賀氏)
『童貞。をプロデュース』という映画は自分にとって大事だった。加賀くんが否定してでも、これを守れるのは自分しかいないと思っていた。この映画が本当に好きだと言ってくれる人とか、この映画を見て映画を作りましたという人に会っていた。そういう人たちのことを考えると、作品を守れるのは自分だけだと。
―カッコつけすぎ。それで本当に責任をとったと?(加賀氏)
だから謝罪しに来た。二年前はそう思っていたが、今は違うということを言いに来た。
—では、当たり屋とか頭おかしくなったなどの風評被害も「作品を守るため」「観客を信じていた」から?もっと素直になってほしい。(加賀氏)
それはごめん。
—共同声明から感じたのは、保身と欲と憎しみだった。この文章を「作品を守ろうとした」として語るのは…いじめとか性暴力含め傷ついた人が、この声明を見たらまた傷ついたと思う。(牛丸氏)
—事実関係を整理してきて、今後どうするかだと思う。それを考えてほしい。(加賀氏)
意固地に「自分の作品を守る」としてたことが、間違っていたと今は思っている。
—(共同声明で)「今後も加賀氏との和解を目指し、話し合いの努力をしていく予定です。」と書いているが、努力は本当にしたのか?(加賀氏)
加賀くんの気持ちのタイミングが分からなかったというのがある。木村くんが書いてくれた時が、もしかしたらと思って連絡した。
—なぜ公開前提での話し合いではいけなかったのか?公に名誉毀損が行われている。それが密室で解決できると?(加賀氏)
やっぱり、加賀くんとちゃんと話せば伝わると思ってしまっている。
—それは自分が思ってたのを、裏切られた。本当に気づけなかったのか?自分たちだけの話じゃない。ここまでしないとこういうケースは今後も解決しないのか?
もっと気づくタイミングはいくらでもあったと思う。(加賀氏)
(※話し合いを通して、やはり納得がいかない気持ちを加賀氏が語る。)
—作品を作る前の松江さんに、今の僕たちがなんて言ったら、気づかせてあげられたのか。 (加賀氏)
もしガンダーラの上映だけで終わっていたら、こうなっていた?
—人知れず我慢したと思う。(加賀氏)
—功名心とか金銭欲は本当になかったのか?(加賀氏)
上映に関してはあった。何かのチャンスだと思った。
—例えば、ガンダーラで上映する際に、「金のためにやってるわけじゃない」「時間がかかっている」と言われた。その後は劇場公開して収益化されている。直井さんからは出演 料十万円と言われたが、このお金は?出演料という名目も分からないし、内訳を求めたら、直井さんからは連絡が来なくなった。こういう経緯も、綺麗に解釈しすぎでは?悪意への自覚が本当になかったのか?信じられない。(加賀氏)
本当にあの時は映画を撮るしかなかった。申し訳ないと思う。当時の自分に戻れるんだったら、「何やってんだ」と。加害の意識がないからこういうもの(共同声明)を出したんだと思う。意固地に作品を守るとして来たことが誰かを傷つけてるんだと、今は考えている。
—この作品を面白いと言った人も傷つけてる。松江さん自身も。嘘を書かれたら、自分は嘘だと言い続けるしかない。その結果、松江さんの身の回りの人も傷つけることになる。
(共同声明は)完全な言いがかりで自分が暴力を振るったと読める内容になっている。家 族からこの件で連絡が来たり、色んな人に言われるし、付き合いがあった人たちからよそよそしい態度を取られたり…色々実害がある。
それはすごく良くわかる。本当に悪かった。そのきつさは本当にわかる。こういう件があって。
—そういう件があったから、こういう話ができてるのかなと思う。自分の声は直接届かないんじゃないか、第三者の声があってようやくこの場が持てたのかなと。
本当にこの二年、自分がどういう風に見られているのだろうとか。本当に色んな人から色んなことを言われた。ただ、不思議と間に立つという人がいなかった。自分にとっては木村くんだった。直接言いたいことが言えないし、苦しかった。ここまでにならなきゃ会えなかったのかなと思う。これも必然だったのかなと。
—悪って弱さからくると思う。(加賀氏)
この二年きつかった。自分の人生とか考え方、生き方にも影響する。それは自分が抱えること。現場で加賀くんが感じることとかは良くわかる。自分も一緒だよと。
—明確にしておいた方がいいのは、その状況を作ったのは松江さんだということ。(川上)
—やっぱり一連の経緯を見て、狂ってると思う。価値観の順位がおかしいと思う。これからどうしていくのか。共同声明を撤回してそのことを周知してもらえるのか?(加賀氏)
そこは同意する。
—お互いの名誉回復に努めていくことは約束してもらえる?(加賀氏)
はい。
—権利侵害に関しては保障してもらえるのか?(加賀氏)
まず、共同声明を全部訂正する。それは加賀くんと連名の方がいいか?
—連名じゃなく、それぞれで良いと思う。元々の声明も連名であることで責任の所在が曖昧になっていた。(加賀氏)
僕と加賀くんで一緒に考えはこうだ、と出す方がいいのでは。また自分が出したものがズレがある、となると…
—それ以前に、各自の態度を出さなければいけない。世間からどう見られるのかは、引き受けなければいけないのでは。(藤本氏)
—失われた権利を回復する、保障するということ。そのつもりは?(加賀氏)
それは加賀くんのために努める。
—それを僕が言うまえに言えば良いのではないかと…この機会は松江さんにとって最後のチャンスだと思う。ずるい言い方かもしれないが。これも(2019年の謝罪文)マジかと思った。そりゃ状況悪くなるでしょう、と。取り急ぎ感が…(加賀氏)
—(2019年の)謝罪文はなぜこういう簡素なものに?(藤本氏)
伝えたいことをシンプルに書いただけ。取り急いだつもりはない。
—本当にそれだけ?それ以外の意図はない?(加賀氏)
ない。『f/22』を名古屋で10日に読んで、思ったことを出そうと。どうしようと思った時にSPOTTEDしかなかった。それで直井さんに連絡をしたら、(今回の対談の)話を聞いた。そういうタイミングだった。
—SNSはなぜ閉めたのか?(藤本氏)
ブログは元々書かずにずっと放置していた。twitterは、自分が何かリツイートしたり書いたりしたことに影響があることが怖くなったのがある。この件があって。
—この(謝罪)声明に関しても大人の事情のようなものはなかった?(加賀氏)
気持ちだけで書いた。ただSPOTTEDから出したことでそう見えるよね。
(※加賀氏が、松江氏の態度に関してどこか歯切れの悪さを感じていることを伝える)
今日は思っていることは全部話した。上映までの間、加賀くんがどう感じていたのかも聞けたし。友達という言い方もしてくれたから。友達ではあったんだなと今日は確認できた。
—うーん…それをまとめ的にいうのは…そういうところが…(加賀氏)
—いじめがあった時に、それをしてる側が「友達だった」というのは…客観的事実として、そうではないということはよくある。(牛丸氏)
—佐渡金山で砂金取ってるみたいな感じで、綺麗なところだけすくい上げても…違和感はある。今日の場で、気持ちのいい、一番良い落とし所が見えて終わるというのを期待していたが…やっぱりちょっと…想像力もリアリティも欠如している。
あくまで印象だが…レトリックと言うか…(加賀氏)
レトリックなんかないよ…
—最低限やることは決めておかないといけない。声明の撤回は、まずやらなければいけないと思う。(藤本氏)
—あくまで途中経過。加賀さんにとっても、松江さん、直井さんの周りにいる人や、他の映像制作者に対しても、どう影響を与えていくのかということもある。(牛丸氏)
加賀くんがどういう形を望んでいるのかをもう少し知りたい。例えば、何回か定期的に会う?
—それより先に、松江さんがどうしようと思っているのかを聞きたい。(加賀氏)
まず声明文は撤回する。
そこは直井さんとか松尾さんも言ってるところ。加賀くんが何を望んでいるのか、そこはなんなんだろうと言うのは。
—受け身ですね…受け身だと思いません?(加賀氏)
今まで自分がやってきたことが逆になっているというのがある。全部加賀くんの感情を逆 撫でしてしまっているのが怖い。決してそんなつもりはないし、変なレトリックとか全くないが、そう聞こえてしまっているのが。次にどうすればいいんだろうと…
—望んでいることは、ご自身で考えて頂いてご提案頂くのがいいんじゃないでしょうか、という。単純に、これをやったら許されるというラインを僕に求めるのは筋違いだと思う。 (加賀氏)
—共同声明文に劇場も絡んでいるなら、劇場も引っ張り出して欲しいが…自分は文章に関しては分からない。この文章にもロサが関わっているのなら…ロサでも嫌だと言っていたはず…実害がある。それをどう捉えているのかを含め…
弁護士を間に挟んで大人の話し合いにしてもいいが、それで解決するのか?(加賀氏)
—もしかしたら、後出しでまた、(今後)出される声明に対して否定することはあるかもしれない。例えば、プレスリリース先の媒体の数が一社でも少なかったら、それは言う。声が小さくなってるじゃないかと。(加賀氏)
載せるか載せないかはプレス側の判断だから…確実に載せてくださいとは頼めない。そこは約束できない。
—約束できなくても、こっちは言う。それはプレスの判断だと言うのは…そういうところなんですよ。多分まだ想像力が足りてないんだと思う。(加賀氏)
—これやって、はい終わりにはならないと思うが、これは松江さんが歩み寄るしかないと思うので、やるしかないと思う。一歩一歩。(満若)
—話をしていて、信用されてないなと思った。(加賀氏)
そんなことない。
—信じるところから始めましょうよ。(加賀氏)
加賀くんは僕のこと信じてくれるの?
—難しいです。逆に信じてもらえると思います?
話をできたことが第一の収穫だと思うので、道は長いと思うが…
イギリスでも上映しているし…DVDも全部回収できない。そのことは了解していないにも関わらず、流している。そういうことも全部含めてご自分たちで考えて頂いて…
正直、信用してない。さっきの「気持ちで書いた」(謝罪文)と言うけど、そんな訳ないじゃんと。状況がそうさせたんだと。(加賀氏)
本当に違うんだよ。僕は名古屋で(『f/22』を見て)、書くと決めた。
—信用したら、信用しただけ裏切られたのが十二年前。それを踏まえて、信用してくれないのは残念だ、と言うのは通らないと思う。そこの客観性がまず欠落してる。(加賀氏)
まず信用してもらうために、ここにいるというのは…
—それすら100%は信じてない。状況が悪くなって、風向きが悪くなって、僕と話をしてというところで、落とし所を探ってるんじゃないかと受け止めている。それは、話してみて、今日の結果としてそう思った。
多くの人は思ったと思う。(謝罪文)を出したのは『音楽』の公開を控えてるから出したんだな、と。(共同声明の時も)テレビやってるから、全部認めない方向で動いたんだ なと。(加賀氏)
そうか…
—それが誤解なら誤解を解くようにするべきだし、誤解じゃないなら素直に言った方がいい だろうし…(加賀氏)
(※対談開始から5時間以上が経過し、終了の空気になる)
—訂正を出すという確約は?(満若)
はい。それは直井さんと相談した上で。
—直井さんが出すとしても、松江さんご自身の名前で監督として出すということは、現段階のこの場の決まりで?いつぐらいに?(満若)
はい。いつぐらいとは言えないですけど、早いうちに。
—あとは、この件に関して、「毀損された権利回復に最善を尽くす」ということを約束して頂いて…(加賀氏)
うん。
—今日の話し合いはそこで同意が得られたということで、いいですかね?(加賀氏)
はい。
(了)