続報『童貞。をプロデュース』問題 当事者同士の対談ーそこから見えてきたもの(1)

『f/22』編集委員 川上拓也

2019年12月末、新宿「Bar DUDE」にて、松江哲明監督作品『童貞。をプロデュース』の出演者であり、その作品の制作プロセスでの性行為の強要やパワハラ、その後の上映を通して受けた肉体的・精神的被害を訴えていた加賀賢三氏と、同作品出演者で、性行為の強要があったとされるシーンの現場にいたAV監督のカンパニー松尾氏、配給の直井卓俊氏、監督の松江哲明氏、それぞれ三名との対談の場が設けられた。

加賀氏の希望により、対談はそれぞれ別日に行われた。対談のセッティングは加賀氏の友人で、直井氏とも交友があった俳優の牛丸亮氏によってなされ、対談には、第三者・取材者の立場として、2019年12月5日にガジェット通信に公開された加賀氏のインタビュー記事を書かれた映画ライターの藤本洋輔氏と、本件とそれに対するドキュメンタリー映画関係者の反応の無さへの失望が一つの副次的きっかけとなり創刊された本誌『f/22』から、満若(編集長)、川上(編集委員)、吉田(記録担当)が参加した。


続報『童貞。をプロデュース』問題 当事者同士の対談ーそこから見えてきたもの(2) カンパニー松尾との対談 ※公開方法について協議中

続報『童貞。をプロデュース』問題 当事者同士の対談ーそこから見えてきたもの(3) 直井卓俊氏の対談  ※4月14日公開

続報『童貞。をプロデュース』問題 当事者同士の対談ーそこから見えてきたもの(4) 松江哲明氏との対談

続報『童貞。をプロデュース』問題 当事者同士の対談ーそこから見えてきたもの(5) 


今回の対談と取材が実現した経緯は下記の通り。

◆2017年8月の舞台挨拶事件以降

加賀氏は「公開を前提とした話し合い」を求めていたが、松江氏は「非公開での話し合い」を求めており、話は平行線のまま、当事者間の話し合いは実現せず。

◆2019年9月ごろ

『f/22』第二号の本件記事を担当していた満若が、松江氏に取材依頼。「まず、加賀氏本人と会って話したい」との理由から、松江氏は取材を拒否。

◆11月1日

特集「撮られる者達の眼差し」内で加賀氏インタビューを掲載した『f/22』第2号発行。

◆12月5日

ガジェット通信に藤本氏による加賀氏インタビュー記事が掲載。

◆12月10日

アップリンク代表の浅井隆氏が自身のtwitterに、藤本氏の記事に言及しながら本件に対する見解を書く。その中で、MOOSIC LAB上映がアップリンクで始まることに触れ「きちんとした対応を望みたい」と意見表明(浅井氏は直井氏の元上司)。

松江氏が名古屋シネマスコーレにて『f/22』第2号の加賀氏インタビューを読む。

◆12月11日

牛丸氏が直井氏と偶然会い「相談したいことがある」と言われる。

◆12月12日

直井氏が、アップリンク浅井氏のtwitterを受けて、何らかのアクションを起こす必要があると思ったこと、松江氏も謝罪を出す準備があること、カンパニー松尾氏からも謝罪したいと聞いていることなどを牛丸氏に相談し、対談のセッティングを依頼。

◆12月13日

松江氏、直井氏の謝罪文がSPOTTEDホームページにそれぞれ掲載される。

◆12月16日

松江氏からも、加賀氏と対談したいとの連絡が牛丸氏に入る。

◆12月12日〜16日にかけて

加賀氏が、撮影・公開を条件に対談を受け入れる。

加賀氏は、一連の動きのきっかけとなった記事の筆者である藤本氏に取材に入ってもらうことを提案するが、松江氏は難色を示し『f/22』を取材メディアに指名。

◆12月17日

松江氏から満若に連絡が入る。

松江氏が謝罪文を出すきっかけとなったのが『f/22』であったことから、加賀氏との対談取材を依頼される。

◆以降、対談まで

最終的に、藤本氏と『f/22』が共同で取材に入ることが決まる。

松江氏は、直井氏、カンパニー松尾氏よりも先に加賀氏と対談することを希望したが、加賀氏はカンパニー松尾氏、直井氏と先に話して、それぞれと事実関係を確認した後、最後に松江氏と話すことを希望したため、カンパニー松尾氏、直井氏、松江氏の順での対談がセッティングされた。

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本件における重要な出来事の時系列や加賀氏の主張については、本誌第二号の加賀氏インタビュー記事(https://shop.hicross-cinematography.com/)や、 ガジェット通信の藤本氏の加賀氏インタビュー記事(https://getnews.jp/archives/2308598)を参照してほしい。

また、加賀氏の個人ブログ、『土下座100時間』の中で、2007年の劇場公開時、10周年記念上映時(2017年8月25日)の舞台挨拶での事件の後に書かれた「告発」についても、本記事で問題にされている内容理解と、加賀氏の一貫した主張理解のために一読されたい。

(2007年10月31日 http://blog.livedoor.jp/onosendai/archives/51364393.html

(2007年11月3日 http://blog.livedoor.jp/onosendai/archives/51367433.html

(2017年9月1日 http://blog.livedoor.jp/onosendai/archives/52771115.html

松江氏、直井氏が本件に関してパブリックに出した声明(2017年の舞台挨拶後、2019年12月のインタビュー記事後の二つ)については下記のリンクを参照されたい。

「8.25(金)「童貞。をプロデュース」 10周年記念上映中止の経緯・ご報告につきまして」(http://spotted.jp/2017/08/25_dtproduce/

「加賀賢三さん、そして「童貞。をプロデュース」で不快な思いをされた方へ」

http://spotted.jp/2019/12/13_message/

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三日間の対談参加者と対談時間は下記の通り(敬称略)。

12月26日(16時から約二時間)

加賀賢三、カンパニー松尾、藤本洋輔、牛丸亮、吉田信治、川上拓也

12月30日(16時から約三時間)

加賀賢三、直井卓俊、藤本洋輔、牛丸亮、満若勇咲、川上拓也

12月31日(9時から約五時間)

加賀賢三、松江哲明、藤本洋輔、牛丸亮、満若勇咲、川上拓也

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対談は、加賀氏が編集・公開を前提として二台のカメラで撮影し、藤本氏が録音、本誌は非公開・記録用の前提で撮影・録音した。

本記事では、対談が藤本氏との共同取材であったことや、対談動画が加賀氏により公開される前提で撮影されていることを踏まえ、記事の肥大化や重複を避けるため、各対談で重要と思われる質問と回答、また参加者それぞれの意見を、編集した上で掲載する。

また、「ドキュメンタリーの作り手による雑誌」である『f/22』編集委員の立場から、三日間全ての対談に参加した川上が、ドキュメンタリーの作り手からの視点で、本件に関しての個人的な考えを述べる。

同対談を元に作成される予定の藤本氏による記事と、加賀氏により公開される予定の対談映像も、本記事の偏りや誤りなどの確認と、対談の正確な理解のため、本記事と合わせてご参照頂きたい。

続報『童貞。をプロデュース』問題 当事者同士の対談ーそこから見えてきたもの(3) 直井卓俊氏の対談  ※4月14日公開

続報『童貞。をプロデュース』問題 当事者同士の対談ーそこから見えてきたもの(4) 松江哲明氏との対談

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