『f/22第3号』全国書店にて発売中!
第3号の内容を紹介します!
今回の第3号はトータル301ページの大ボリューム!その内容を編集委員川上が独自解釈で、紹介していきたいと思います。
まずは「特集1 さあ、カネの話をしよう!」です。
これまで、あまり公けには語られてこなかったドキュメンタリー制作におけるお金の話。日本の文化的な問題もあってか、「カネの話」はどうもしにくい…という空気をあえて読まずの必読特集です。編集部の独断と偏見による「ドキュメンタリー制作」に関わるイラスト付き主な役職解説と、なんだかんだでみんなが気になる「各職種のギャラ相場」などをまとめた見開きに始まり、ドキュメンタリー制作の酸いも甘いも知り尽くした5名の方にお話を聞きました。
———-① 『ザ・ノンフィクション』のノンフィクション / 味谷和哉さん
フジテレビの『ザ・ノンフィクション』で長年に渡ってチーフプロデューサーをされてきた味谷さんに、ドキュメンタリー番組制作費がどんどん削られていった内情を赤裸々に語っていただいています。現在のテレビ業界への愛ある痛烈な提言も。インタビュアーは同番組をディレクターとして多数手がける李玉美さんと、同じくテレビディレクターとして活躍中の編集委員の江藤孝治さん。現場でディレクター業をしている人だから聞ける質問、そして低予算でも番組制作を試行錯誤して成立させる工夫など、テレビマン必読です!
———-② ドキュメンタリー映画のカネの話 / 山上徹二郎さん
映画製作・配給会社シグロの代表として、土本典昭監督作品に始まり数々の名作ドキュメンタリー映画を30年以上に渡って、プロデューサーの立場で世に送り出してきた山上さん。シグロ立ち上げ経緯の話から始まり、劇映画とドキュメンタリー映画を両輪で作ってきた時の金回りの実際、スタッフへの未払い、借金…などなど、会社運営のカネの話、こんなに聞いちゃって(公開しちゃって)いいんですか?と、こちらが逆に心配になるくらいの赤裸々トークを聞かせて頂きました!賛否両論必至!?このインタビューを読んで、さて、これからの作り手はどうしていこうか、と考えるきっかけに間違いなくなるはずです。
———-③ 倒産劇の裏に見えた”報道業界の現実” / 高世仁さん
報道番組内の特集枠でスクープを連発し、中東や北朝鮮問題を、独自の調査報道で伝えてきた「番組制作会社 ジン・ネット」が昨年2月(コロナが猛威を振るう直前ですね)に倒産。報道番組の枠や制作費は時代と共にどう変わってきたのか。日本電波ニュース時代から報道現場を長年にわたって見てきたジャーナリストで、ジン・ネット前代表の高世さんが答えてくださいました!倒産に至るまでの経緯や、報道番組の「内容」の変化(情報番組化?と言っても良いのだろうか)、じっくり調査報道をして特集を作ることが難しくなっていった事などなど、いわゆる「局」と「制作会社」の関係の実情も良く分かります。私は映画スタッフですが、なるほどーっと頷きながら、俄然面白く読みました!
———-④ ヒット作への道程 / 大島新さん
『ぼけますから、よろしくお願いします。』というドキュメンタリー映画、ご存知の方も多いのでは。観客動員数9万人を突破する大ヒット作のプロデューサー、大島新さん。ご自身がディレクターでも監督でもあって、テレビ畑でも映画畑でもピリっと一味違う作品を世に出し続けている「ネツゲン」元代表。最近では『なぜ君は総理大臣になれないのか』を監督として世に送り出し、こちらも観客動員数3万人突破!(ドキュメンタリー映画は、大体1万人の観客動員数を超えると「ヒット」と言ってもよいくらいの感じ)。ただ、製作した作品全てがヒットしてきたわけでもないようです。具体的なカネの数字も語られながら、作家性と商業性の中でどう勝負していくのか、という話に繋がっていく本記事は、特に作り手にとって超参考になるはず!
———-⑤ お金からみた韓国映画業界 / 藤本信介さん
最後はちょっと色が変わって、ドキュメンタリーに限らずの「映画」のカネの話の韓国日本比較。2003年から韓国映画業界の演出部で17年間にわたり仕事をしてきた日本人がいる…藤本信介さん。韓国映画界での製作費の規模感、各パートのスタッフの雇用形態や労働条件、ギャラの違いなどなど。日本映画界は韓国映画界に「置いていかれるのか」…(『パラサイト』は日本で作れるか?)。それとも、低予算でも多様性を確保した作り方でまだ勝負していけるか…(『偶然と想像』がベルリンで銀熊賞!)などなど考えざるを得ない内容です。韓国映画界の「現場のリアル」は、日本映画界の末端で仕事をしている身としてとても参考になりました。韓国映画の現場メシは食事の時間もきっちり確保されて、絶対あったかいらしい!「メシおしでお願いします!(撮影スケジュールが遅れてご飯のタイミングが遅れる事)」「すいませんちょっと短かくなりますが、30分後再開でお願いしまーす!(スケジュールが厳しくご飯休憩が1時間から30分に)」などなどの制作部さんのかけ声を聞くのが「当たり前の感じ」しか知らない日本映画スタッフとしては、マジでうらやましい!
———-以上、ざっと「特集1 さあ、カネの話をしよう!」の紹介(というか感想みたいになってしまいましたがお許しを)でした!